この書は、ラインブックス社から一度出版したものを、第三書館の御厚意で、再度出版
したものです。
まったく同じものではなく、元の内容に、少し書き足しました。
普通の人にとって、刑務所はまったく縁のないところでしょう。
しかし、そこは、国家権力が、否応なく国民の自由を奪い、強制的に働かせたり日常を 支配している場所です。
その背景には、国家のみが独占している暴力≠ノよる威圧があります。
無実の罪や、ワナにはめられて、そこに入れられる理由がないのに入れられる人も決し てないわけではありません。 権力者と戦うときは、つねにそうした危険にさらされているものです。
この国の刑務所は、決して恐ろしいところではありません。 むしろ、一種の極限状態の中で人間の本質か赤裸々に、むき出しになった、人生劇場
として興味のつきないところでもあります。
仏教で十界ということが説かれています。
地獄=A餓鬼=A畜生=A修羅=A 人=A天=A声聞=A縁覚=A菩薩=A仏≠ニいう人の心の働きや境涯の 分類ですが、それぞれの境涯に、又、十界が備わっているのです。
そのありさまが、刑務所にいると、本当によく理解できます。 又、教典には、さまざまの魔物や妖物、ものの化の話や名前が出てきます。
刑務所にいると、それらが、決して只の空想の魔物ではない、人間そのものに備わった 、働きや形だということがわかります。
因果≠ニいうことも、理解できます。 そうしたことは、又、別の機会に書こうと思っていますが、この獄中記≠ヘ、もっと 肩のこらない読物として、楽な姿勢で読んでいただけたら幸いです。
もくじ
ことの起こり
旅立ち
病棟生活 その一
病棟生活 そのニ
教育訓練工場
工場風景
塀の中の風景
日常生活
地獄の沙汰も金次策?
塀の中のさむらい達
刑務所エレジー
レゲエへのあこがれ
受刑者と職員
教育とクラプ活動
娯楽とクラプ活動
年中行事
刑務所と私 −少し神妙な話−
脱出準備
出獄の日
蛇足
|